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フレンステッド
モビール

伝統工芸を現代の
インテリアに

美術館やインテリアショップなどでも売られる、大人の鑑賞にも耐えるモビール、といえばデンマークの「フレンステッドモビール」。親子2代で作り上げたモビール作りの知識や技術、その蓄積は他の追随を許しません。

Study1

半世紀以上使用している紙の裁断機
紙の切り絵(プラスチック以外)は機械で裁断されています。この機械というのが、いまどきの工場では見られないような古いもの。初代クリスチャン氏の時代に購入し、すでに50年を経ているドイツ製の品物。昔の機械だけあって、職人がコツをつかまないとよいデキにならないもので、ここは職人さんの技量が問われます。
裁断機とオーレ氏と紙切りの職人さん。丁寧にメンテナンスしながら「あと100年はもつよ」と使い続けています。

Study2

人気のアンデルセンコレクション
デンマークのオーゼンセは童話作家のアンデルセンの故郷としても有名です。昨年、アンデルセンの生誕200年記念に、フレンステッドモビールではアンデルセン切り絵カードを発表しました。アンデルセンは切り絵作家としても活動しており、ハンス・クリスチャン・アンデルセン博物館に1500余りの切り絵コレクションが収蔵されています。
アンデルセンのオリジナル切り絵シリーズ
は童話に登場するキャラクターたちが!
(右から)「Heart」、「Pixie Troll」、「Pierott」。

Study3

名物の気球は街の人気者
フレンステッドモビールは地元オーゼンセでとても愛されている会社で、地元紙にはよく登場する常連さん。モビールの作品紹介ももちろんですが、会社で持っている気球もまた話題の的。レースに参加することもありますが、週末、天気がよくて気分が向いたら「ちょっと乗ってみようか」なんて感じで気球を飛ばしたりするそうです。
フレンステッドモビールの気球は、色とりどりの布地に、ゾウの模様がついたもの。このゾウの形は、登場以来長く人気を誇るモビールの形と同じです。

簡単に見えて、実は緻密で繊細な作業。
納得できるのは年に2、3個。

フレンステッドモビールの歴史
親子2代で、デンマークの小都市から
世界のリーディングメーカーへ
 クリスチャン・フレンステッド氏とその妻グレーテさんがモビール専門の工房「フレンステッドモビール」を立ち上げたのは1954年のこと。作品第1号目であるStork(コウノトリ)が評判を得て、以後、オーゼンセを代表するモビールのメーカーとして知られるようになりました。
 83年からは息子のオーレ氏が引き継ぎ、デンマークやヨーロッパだけでなく、日本やアメリカでも人気の高いモビールのリーディングメーカーとなりました。
↑1828年設立の古い学校を改装して作ったフレンステッド家の自宅兼工場。
↑現在の社長兼チーフデザイナーのオーレ・フレンステッドさん。(右上から時計回りに)ハリネズミの親子「Hedgehog Family」。親子のテーマはほかにもアヒルやクジラ、人間なども。ヒツジ「Sheep Mobile」。フレンステッドモビールの原点となった「Stork」。会社のシンボルマークにもなっている、ゾウ「Elephant Party」。ほかにも鳥や飛行機、気球など、空を飛ぶものはフレンステッドモビールのお気に入りのモチーフ。

 フレンステッドモビールの魅力は、その製品の幅広さと精緻さ。紙やプラスチックでできた切り絵と針金や糸、シンプルきわまりない素材から、こんなものもあんなものも、というほど幅広い作品が生まれてくるのです。
 初代クリスチャン氏が得意としたのは鳥や動物、船など具象的なモチーフ。シンプルで愛らしい図柄はいまでも多くの人々に愛されています。一方、子供のころから科学に夢中だったオーレ氏は幾何学的な形をモビールに持ち込み、子供向けの玩具から一躍、大人も持ちたくなるような洗練されたインテリアアクセサリーへと昇華させました。
 バリエーションの多さは「切り絵を変えていけばいいだけじゃないの?」と思ってしまいそうですが、簡単そうに見えて、これがなかなか難しい。長く見ても飽きないようなモチーフで、モビールのパーツをバランスよく作り上げるには、美術的なセンスに加え、物理学的なセンスがなければできません。
 たとえキレイな形を思いついたとしても、きちんとバランスが取れるように配置しようと結び目を変え、位置を変え、などとしていくうちに、当初考えたイメージとどこか違ってしまう。それをひとつひとつ調整しながら作っていくのです。
 そんな繊細な作業だけに、20年あまりもモビール設計を手がけているオーレ氏は自ら「宇宙研究所」と呼ぶアトリエで日夜試作作りに励んでいます。それでも納得できる作品は年に多くて2、3個。少ないときは1年に1個しか新作を出さない、ということもあるとか。むろん量産するために、製作、組み立てを担当する人々の高い技術や細かい配慮も必要です。組み立てを手がける人はベテランが多く、中には80歳を超える人も。
 モビールというと子供向け玩具店などに置かれることが多い。ですが、フレンステッドモビールはミュージアムショップでも売られ、アーティストから特別注文の依頼を受けることもあります。これもまた、高い技術と美的感覚が評価されている証拠でしょう。

撮影/黒澤俊宏 取材・文/渡部千春
取材協力/FLENSTED mobiles
www.flensted-mobiles.com/