フレンステッドモビールの魅力は、その製品の幅広さと精緻さ。紙やプラスチックでできた切り絵と針金や糸、シンプルきわまりない素材から、こんなものもあんなものも、というほど幅広い作品が生まれてくるのです。
初代クリスチャン氏が得意としたのは鳥や動物、船など具象的なモチーフ。シンプルで愛らしい図柄はいまでも多くの人々に愛されています。一方、子供のころから科学に夢中だったオーレ氏は幾何学的な形をモビールに持ち込み、子供向けの玩具から一躍、大人も持ちたくなるような洗練されたインテリアアクセサリーへと昇華させました。
バリエーションの多さは「切り絵を変えていけばいいだけじゃないの?」と思ってしまいそうですが、簡単そうに見えて、これがなかなか難しい。長く見ても飽きないようなモチーフで、モビールのパーツをバランスよく作り上げるには、美術的なセンスに加え、物理学的なセンスがなければできません。
たとえキレイな形を思いついたとしても、きちんとバランスが取れるように配置しようと結び目を変え、位置を変え、などとしていくうちに、当初考えたイメージとどこか違ってしまう。それをひとつひとつ調整しながら作っていくのです。
そんな繊細な作業だけに、20年あまりもモビール設計を手がけているオーレ氏は自ら「宇宙研究所」と呼ぶアトリエで日夜試作作りに励んでいます。それでも納得できる作品は年に多くて2、3個。少ないときは1年に1個しか新作を出さない、ということもあるとか。むろん量産するために、製作、組み立てを担当する人々の高い技術や細かい配慮も必要です。組み立てを手がける人はベテランが多く、中には80歳を超える人も。
モビールというと子供向け玩具店などに置かれることが多い。ですが、フレンステッドモビールはミュージアムショップでも売られ、アーティストから特別注文の依頼を受けることもあります。これもまた、高い技術と美的感覚が評価されている証拠でしょう。
撮影/黒澤俊宏 取材・文/渡部千春
取材協力/FLENSTED mobiles
www.flensted-mobiles.com/